二世帯住宅は「生活空間が2つ」あるため、一般的な住宅よりも エアコン設計が複雑になります。
特に、
- エアコンの台数は何台必要なのか
- 配管ルートはどう確保するか
- 室外機は共有してよいのか
- 電気容量は足りるのか
など、建築段階・リフォーム段階のどちらでも多くのご相談があります。
この記事では、二世帯住宅における 最適なエアコン設計のポイントをプロ目線で解説し、
施工依頼にもつながる内容でお届けします。
■ なぜ二世帯住宅はエアコン設計が難しいのか?
二世帯住宅には下記のような特徴があります。
- 生活リズムが異なる
- 使用時間帯が違う
- 1階・2階で温度環境が大きく変わる
- 水回り(キッチン・浴室)が2つになる場合もあり湿気量が増える
- 配管ルートの確保が難しい構造が多い
- 室外機置き場のスペースが限られる
そのため、一般住宅の倍レベルで事前設計が重要です。
■ 適切なエアコン台数は?【結論:二世帯は“最低でも2システム”】
二世帯住宅の場合、
生活空間が完全に分かれている「完全分離型」では、基本的に 各世帯ごとに1システムずつ必要になります。
● 完全分離型(二世帯それぞれの生活空間が独立)
→ 2システム運用が最適
- 1階:リビング・寝室・子供部屋など
- 2階:リビング・寝室・子供部屋など
※ 特に2階は熱がこもりやすいため、エアコン容量を大きめに設定。
● 部分共有型(リビングや玄関を共有)
→ 部屋の配置により 台数が変動
共有スペースは大型エアコン+個室は個別設置が基本。
● 水回り共有型
湿気の量が増えるため、
脱衣所や廊下に「スポットエアコン」「小型空調」を設置すると快適性がアップ。
■ 配管ルートの確保が難しい理由と解決策
二世帯住宅でよくある問題は 配管ルートが確保しにくいという点。
二階世帯のエアコン設置でも、配管を1階まで落とす必要があり、
- 外観が悪くなる
- 配管距離が長く性能低下
- ドレン水の処理が難しい
などが発生しやすいです。
▶ プロがよく使う配管ルートの工夫
- 屋根裏スペースを通す
- 外壁に沿わせて専用カバー(ダクト)で保護
- バルコニー側にまとめる
- 外壁に穴開けせず既存ルートを再利用(構造次第)
配管は家の寿命に大きく関わるため、設計段階で必須の検討項目です。
■ 室外機は共有できる?【結論:原則「共有しない」が正解】
「二世帯なら室外機の共有で節約できますか?」という質問を多くいただきますが、
基本的に共有は非推奨です。
理由は以下の通り:
- 片方の世帯だけ高負荷になると故障リスクが上がる
- メンテナンス時に両世帯へ影響する
- 使用量のトラブルになりやすい
- 配管分岐で性能低下が起きることも
▶ 例外として…
ビルマル(業務用マルチエアコン)でまとめるケースもありますが、
家庭用では 独立した室外機運用がもっとも安定します。
■ 室外機置き場が足りない場合の対処法
二世帯住宅で非常に多い相談が
「室外機を置くスペースが足りない」です。
解決策
- ベランダに“二段置き架台”を設置
- 壁面ブラケットで外壁に設置
- スリム型室外機へ変更
- 室外機を北側へ集約して配管ルートを延長
- 小型エアコンを複数台に分けて設置
適切に設計すれば意外と解決できることが多いので、
事前調査が非常に大切です。
■ 二世帯住宅は“電気容量の見直し”も必須
二世帯はエアコン台数が多くなるため、
30A・40Aでは容量不足になるケースが多数。
▶ 対策
- 契約容量を50A〜60Aにアップ
- 子メーター(サブメーター)で世帯ごとに管理
- 太陽光+蓄電池で使用量を分散
- ブレーカー配線の見直し
電気工事とセットで相談できる会社を選ぶのが重要です。
■ プロがおすすめする二世帯住宅の空調設計ポイント【総まとめ】
- 生活空間ごとに エアコンシステムは分ける
- 室外機の共有は基本NG
- 配管ルートは家の構造に合わせて慎重に設計
- 室外機置き場は早めに確保する
- 電気容量のチェックは“ほぼ必須”
- 2階世帯は容量大きめのエアコンが快適
- 湿気が多い家は脱衣所・廊下のスポット空調も有効
■ 二世帯住宅のエアコン設計は“建てる前 or リフォーム前”がベスト
二世帯住宅は一般住宅よりも圧倒的に エアコン計画の難易度が高いため、
「建ててからの相談」より
「建てる前の相談」で完成度が大きく変わります。
- 室外機の置き場
- どこに穴を空けるか
- 配管ルート
- 電気容量
- 台数の最適化
これらを事前に考えることで、
壊れにくく快適で、見た目も美しいエアコン設置が実現します。

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